突然思い出したこと62「ガリバー」

 小学生になる前の頃だろうと思う。たぶん母か祖母が買ってきてくれた自由帳の表紙が突然思い出された。
 ガリバーが小さな船に乗っている絵だ。もちろん船は大きいのだが、ガリバーが大きすぎてガリバーが乗ると、まるでタライぐらいの感じだ。バックは黄色で船は左向き。ガリバーはといえば、船の甲板にどっかりと腰掛けて表紙でいうと右斜め下、ガリバーにとっては左後ろの下を向いてにっこり笑顔だ。頭髪は金髪(印刷は黄色なのだが)で長髪(音楽室に掲げられている昔の音楽家の鬘みたいな感じ)、髪には赤い小さなリボンも付けていたような気がする。赤い三角の旗が一反木綿のようになびいている。服装は青い生地で白い縁取りの船長スタイル。船は帆船。なぜかマストが一本。ちょっと安宅船の感じ。たぶんガリバーを乗せられないから一本にしたのだと思うけれど、ガリバーの座高はその帆を凌ぐ高さで描かれていたから、子ども心にこれではガリバーが帆の代わりだなと思ったものだ。
 しかし、そのとき僕は大発見をしたという感じがした。それは舵だ。ガリバーは左手で舵棒を握っていた。舵はなぜか海面から随分顔を出していた。もちろん舵など本物を見たことがなかったし、舵という言葉も知らなかった。しかし、なぜかこれは直感的に船の推進装置だと思ったのだ。それを左右に操作すると、それが金魚の尾びれのような働きをして船が進むと思ったのだ。櫓は見たことがあったので、西洋の櫓はそのようなものなのだろうと思ったと記憶している。
 ガリバーが大きすぎ、ガリバーの手があたりでもしたら細いマストなど簡単に折れてしまいそうだったから、その推進装置にはなぜか僕にとって説得力を持った。マストが折れたときの補助推進装置というわけだ。また、ガリバーが大きすぎて、この推進装置を使わないと、この船は絶対に進まないのではないかとも思ったのだ。
 これらの大発見を得意げに家族に触れて回った記憶はあるが、それは舵だよと教えてくれたかどうかは記憶にない。その後、その自由帳を使った記憶もないし、捨てた記憶もない。おそらく3歳か4歳の頃だろう、かなり記憶は薄れているのだが、このガリバーの表紙は印象的でカラー写真のように鮮明な記憶として残っている。
 風呂場で自由帳を左手に持っている僕。これはもしかすると、風呂場に入ったばかりの僕に祖母が「これは舵だよ」と教えるためにがらりと風呂場の戸を開けて自由帳を僕に見せたときの記憶なのかもしれない。
 ところで、このようなワンポイントの記憶はなぜ残るのだろう。自分の中で何かの役目を果たしているとは思う。そのために残されているはずだと考えたい。では、この記憶は僕にとってどんな役目を果たしているのだろう。夢判断のように、記憶判断が可能かもしれない。まずは夢判断を利用して占ってみるか。
 どれどれ、「常識をはみ出した行動により、周囲から顰蹙を買うおそれあり。あなたの行動を周囲が注目している。」というような内容の結果が出た。ああ、思い当たる節がある。自粛、自粛。なるほど役に立った。

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「がんばったら疲れる。疲れたら休む。休んだらがんばる。」ということにしておこう。
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