突然思い出したこと121「大道芸人」

 大道芸というものがある。大道芸人は屋外で芸をする。懐かしくも遠い記憶だ。
 幼い頃、がまの油売りを見たことがあるが、あれも大道芸なのだろうか。日本刀で自分の腕に傷をつけ、がまの油で瞬間的に直すのだ。今考えてみるとそんなことは不可能だ。
 研がれた日本刀で、本来の日本刀の操作で切られたなら、腕は落ちている。腕の切り口にがまの油を塗って、さあ治りましたということならすばらしいが、それでは切り口をハムのようにスライスしながら、がまの油売りを続けなくてはならない。次第に腕は短くなり、完全な片腕になってしまうので、後継者に座を受け渡さなくてはならなくなる。
 できるだけ薄くスライスして、何回もがまの油売りをすることができる者が立派ながまの油売りとなる。最初は五ミリの厚さでしか切れないかもしれないが、熟練するにつれ、一ミリスライスが可能となり、限度はあるものの加速度的に残回数が増えることになる。当然、腕の長い人の方が長い分だけ有利になるのだが、神業的にかさぶただけを切り落として骨肉を切らないこともできるようになるに違いない。ただし、かさぶたができた後、そして落ちる前の微妙なポイントで、がまの油売りをしなくてはならない。これはかなり頻繁だ。頻繁にできるということはかなり商売向きに進化した技だということになる。しかし、もちろん、こんな油売りは最初からいるはずはない。
 部分的に刃をつけた模造刀に赤い着色料をつけておき、それを腕の平らな面にあてがって引けば傷のように見えるから、それをがまの油で拭き取って、きれいに元通りにしているとしか考えられない。
 本当に切っている強者のがまの油売りがいたとしよう。しかし、そのがまの油にどんなに優れた止血効果があったとしても、縫わねばならぬ深さの傷は、やはり治せないはずだ。赤い線はついても血がたらたら流れ出るパフォーマンスはまだ見たことがないので、流れ出る血は止まらないということだろう。
 もちろん、度重なる怪我でプロレスラーの額が割れやすくなって、血が出やすいようになっているように、がまの油売りも位置をよく見定めて血が出やすくなった部分に添って何度も切っているのかもしれない。しかし、僕が見たがまの油売りの腕は白くつるんとしてしていて何の傷跡もなかった。白い腕はもしかすると、赤い傷跡を目立たせるためのものかもしれない。黒く日焼けしていたらかなり長く深く切ったことにしないとならないだろう。それでは大出血しなければならなくなる。これはパフォーマンス上、非常にまずいに違いない。
 すると、がまの油売りは腕を日焼けしないように注意して生活しているに違いない。夏でも長袖の男は、ひょっとするとがまの油売りであるかもしれない。こう考えると多少は世の中面白く見えてくる。逆に冬でも半袖の男は何をしているのかと想像してみるのも面白い。
 ところで、雨降りでもかまわない大道芸があれば、祭り主催者としては心強い。また、大通りや大きな公園がない地区では、小道芸を探さねばならない。小道芸なるものなど聞いたこともないが、屋内ではふさわしくなく、しかも狭いところが似合っている芸というものがあれば助かるだろう。
 雨降りでも構わない大道芸にはどのようなものが考えられるだろう。水に溶けやすい衣裳を着て、雨に振られればその衣裳が溶けてなくなり、その下に着ていた水に強い衣裳が現れるというのはどうだろう。その衣裳を脱ぐと、その下にはまた水に溶けやすい別の衣裳が現れるという寸法だ。軒下とか店舗内で見ている客に、溶けてこびりついている衣裳をホースの水で吹き飛ばす役をやってもらえば盛り上がること間違いなしだ。新しいタイプのストリップというわけだ。
 また、高熱を発する衣裳を身につけてパフォーマンスをすれば、衣裳に雨が触れた瞬間に蒸発して煙のように見えるから面白いだろう。全身では危険なので、掌だけとか、お尻だけとか、部分的に見せたところに雨が当たって蒸気を出すという形にした方がよいだろう。これは晴れても肩こりのひどい観客の肩を温めて気持ちよくさせたりできるから人気が出るかもしれない。
 小道芸などという言葉はないが、ストリートマジックのなかには小道芸に近いものもあるだろう。これも幼い頃、ストリートマジックのおじさんからインチキねたを何度か買ったことがある。あれは何だったのだろう。唾をつけると血のように赤くなる薬とか、写真がいろいろに変わるインチキ写真とか、マジックではないけれど日光写真機とか……。落ちている小枝で進入禁止のラインをひいて、その周りに子どもたちを集めるのだ。

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<絵本になったがまの油売りの口上 画像クリックで説明画面へ>

どこにいるの? について

「がんばったら疲れる。疲れたら休む。休んだらがんばる。」ということにしておこう。
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