「砦のぼく」
変な雲の
変な気圧の
変な建物に
ぼくはいる
床と平行に
ゆっくり飛んでいる
変なぼくがいる
段差がいっぱいの
変な図書室
右往左往の人々が
急にいなくなる
設計ミスの巨大建築
変な講義室に
濡れ傘を持って
一人時間を潰している
今日は何かの祝日に違いない
自由になったぼくは
くつろいだイカのように
ゆるりゆるりと
床と平行に飛んでいく
立ち並ぶスチール写真の人々を
今日の足がかりに
可動空間を広げる
蓄積されていく夢の
緩慢な自動連結
よちよち歩きのこの世界は
恐らく僕の最後の砦
膨大な情報の
矢継ぎ早の攻撃に
へっちゃら顔
じわりじわりと
柔らかな結晶になっていく
この砦に
透明な翼は
ますます音もなく