「語り部」
闇を語れ
いやらしい光に覆われて
真実の闇が
さっぱり見えないじゃないか
そしたらもう闇の語り部
ことばを杖に探り歩く
哀れ貧しい生き物だ
一発芸の連続で
ごまかされてきた目と心
だが僕たちの耳は頼もしい
時を越えて執念深く
たどたどしい追及は貪欲で
しかもスペクトラムだ
どうにも闇を語れ
闇が闇として
僕の左肩を染めるころ
光が光として
僕の右眉を照らすだろう
偽物にも本物と偽物があり
本物にも本物と偽物があることの
本当の意味がわかるということだ
はやくしないと
光ばかりに目がくらみ
落とし穴から出られない
穴が大きすぎて
落とし穴だとわからない
光の強弱で
偽の闇がうみだされていることの恐怖
真の闇を
闇として語る習慣のない恐怖
だがしかし
何から何まで手遅れなので
新しく一歩を踏み出すしかないという喜び