怪しい広辞苑211「アンドロメダ星雲」

 広辞苑第四版102ページ、広辞苑第六版115ページ「アンドロメダ星雲」の説明はこれでよいのだろうか。
 広辞苑第四版の牛飼座の星図の絵を見ていて不思議に思ったことを綴ったことがあるが、そのついでに100ページほど戻ってしまうが、広辞苑第四版の「アンドロメダ座」の星図の絵を確認した。そのとき、「アンドロメダ星雲」の説明を読んで心配になったことがある。それは「アンドロメダ星雲」の大きさだ。
 広辞苑第四版は一九九一年出版だから、「銀河系とほぼ同じ大きさをもつ。」という説明でよいのかもしれないが、二〇〇八年出版の広辞苑第六版の説明に同様のことが書いてあれば、それは新しい観測結果を反映させていないことになってしまう。
 二〇〇五年のカリフォルニア工科大学のスコット・チャップマンらの観測結果の発表で、これまで考えられてきた直径の約三倍ほどの直径である22万光年以上の大きさをもつということが示されたはずだ。これは銀河系の直径だと考えられている十万光年の二倍以上だ。しかし、それ以後はアンドロメダ銀河の大きさに関する話題を自分自身は聞いていない。日本惑星協会のアンドロメダ銀河の説明では、この発表を受け、この天の川銀河よりもアンドロメダ銀河の直径の方が2倍ほど大きいと訂正されている。
 二〇〇五年五月のレポートを読んでみると、まだ追加観測が必要だと書かれている。そのせいかもしれないが、先程立ち読みしてきた広辞苑第六版には、やはり「銀河系とほぼ同じ大きさをもつ。」という説明が載せられていた。二倍以上の直径であるということが本当なら、ほぼ同じ大きさをもつという広辞苑第六版の説明は大幅に間違っているということになってしまう。
 新しい観測結果が発表されてから既に三年たった後の出版なのに、銀河系の直径の約二倍あるという説はまだ評価が定まらないものだと判断したのだろうか。少なくともこの説に反論する報道を耳にしたことがまだない。三年も経ってこの説に反論する動きがないのならば、二〇〇八年に出版された広辞苑第六版では、少なくとも「この銀河系の二倍の大きさをもつといわれている。」というぐらいの表現に訂正したほうが好ましかったのではないかと思う。
 いくら追加観測や追加調査が必要だという謙虚な発表であったにしても、その大きさが定説となるまで待ってから記述内容を更新するという広辞苑の編集姿勢はいかにも妙だ。世の中では次々に新発見がなされていくのだから、辞書はその版を重ねることで、発見されていくその様子を知ることができるものでなくてはならない。特に天文関係などは定説になるまで待つなどということをしていたら、半永久的に過去の定説を繰り返し載せることになることにもなりかねない。
 以前の定説や通説が崩れ始めたら、それとわかるように「……ともいわれている。」とし、新しい定説になりかかったら、「……といわれている。」というようにするなど、その出版時の状況に応じて表現を変えるのが親切というものだろう。版を改めるということには、そうした説明表現の微調整をするという意味もあるはずだ。
 新しい語句を見出し語として追加するとか、しないとかいう論議も大事だが、それよりも載せ続ける語句の意味や説明が、版を重ねていくにしたがって必要に応じて変化させていくようでなければ、その内容を信頼できないことになってしまう。何も毎年改訂しなければならないわけではない。利用者のことを少しでも考えているのならば、少なくとも改訂時には説明の仕方を配慮していくという編集が必要だろうと思うのだ。
 広辞苑は理系の語句に弱いと言われることがある。もし、それが本当ならば、新しい解釈、新しく発見されたものなどについて、あまりに正確を期すために、それをどう説明してどういうタイミングで載せるかという検討を長年重ねることになってしまうのかもしれない。そうでなければ、単に検討が足りないか、ほとんど検討していないかのどちらかということになってしまう。
 もし表現に困るなら、「通説」「定説」「新説」というように区分けして示してしまうというのもよいだろう。一種の逃げかもしれないが、そうしてくれた方が利用者としてはたいへんありがたい。
 とにかく、新説が正しいという評価を得るまで、延々と昔の説を見せられていたのではたまらないということだ。人間が努力すればするほど世の中はめまぐるしく変わるのだから、辞書も同じ程度に努力をしてもらわないと役に立たないものになるどころか、時代遅れのマイナスとなってしまう。それでは広辞苑というブランドに傷がつくというものだ。僕にはそれが耐えられない。不易流行ということが辞書には最も当てはまるのかもしれないが、広辞苑のような中型辞書ではそれなりの人手と労力をかけて編集作業に当たらねば、うまく利用者の役に立つことのできない辞書になってしまうのではなかろうか。
 広辞苑第七版が出版されるのは広辞苑第六版出版十年後の二〇一八年の可能性が高い。それだけ年月が経っていれば、アンドロメダ銀河の直径が僕たちの銀河の何倍というように確かな数字が定説として示される状況になってくるのかもしれない。
 因みに、見出し語については改訂されていた。広辞苑第四版では「アンドロメダ星雲」という見出し語があって、説明の中に「アンドロメダ銀河」とあったが、広辞苑第六版では、見出し語の方が「アンドロメダ銀河」となり、説明の中に「アンドロメダ星雲」とある。「星雲」から「銀河」になったのだ。
 世間で「アンドロメダ星雲」から「アンドロメダ銀河」という認識になってから、どの程度の年数が経ってから広辞苑の改訂が行われたかという問題がある。これは世間でアンドロメダ銀河の直径が僕たちの銀河の二倍の直径をもつという認識になってから、どのくらいの年月が経ってから広辞苑での改訂が行われるかという目安になるかもしれない。

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