心の断片271「あまい風が吹く」

「あまい風が吹く」

過ぎ去りし日々を
小さなかけら
思い出のペンダントにして
あこがれの地へ
むかう足どり
頬も爪先も
こんなに凍えてしまって
なのにどうして
僕は無邪気にこころを
こんなに弾ませているのだろう
あまい風が
久しぶりに吹いている

 あこがれの地はいわゆるあこがれの地ではない。よくよく見ればどことも変わらぬ土地だ。その地から日常の営みを削除して、そう、何か大事なものを見ないことによって、あこがれの地だと呼ぶことは今もできるかもしれない。
 日常からかけ離れた「おもい」を抱くことでやっと生きているありさまなのに、しっかりとその尻尾をつかんでいないと、どこかにするりと飛んでいってしまいそうでならない。いつもいつも念じていることだけが、防衛策だ。全く不便な生き物に生まれついたものだ。
 それはそうとして、その「おもい」とは何であったか。それは時の流れに洗われて美しく輝きながら次第に小さく割れていき、最後は細かく粉のようになって吹き飛んでいってしまう。言葉と言葉の隙間から顔をのぞかせたり、仕草のように体に刻み込まれたりしたものはまだよい。大方は僕の手元でくるりと反転しながら離脱してしまう。そして、虚空に散っていき、何でもないものになってしまう。
 ところが、それでもそれは何か一つの複雑な気分のようなものに変質し、こころにとどまることもある。そして、その複雑さも時を重ねる中でいつしかさわやかなものに洗練されていき、人がそれぞれもっている輝きのようなものになる。むなしい輝きかもしれないが、何もないよりはよいだろう。
 あまい風はどこまでもすがすがしく、全知全能傾けて困難に立ち向かう気持ちにさせてくれる。このまま無邪気に砕け散ってもよいかなという誘惑にかられるほどに僕の精神を麻痺させてもくれる。だから、僕は後ろ手にした左拳を強く強く握りしめていなくてはならないのだ。

どこにいるの? について

「がんばったら疲れる。疲れたら休む。休んだらがんばる。」ということにしておこう。
カテゴリー: 心の断片 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中