広辞苑第四版246ページ「馬つくらい」の説明。「馬の保健のために行う治療。針を刺したり焼鏝(やきごて)を当てたりする。」とあるが、「馬の保健のために」という表現が何か鼻につくのは僕だけだろうか。
結局は、「馬を酷使し続けるため治療。」なのではないか。そうした言い方が許されないのなら「馬を使い続けるための治療。」とすれば少しは人聞きがよくなるだろう。それが気に入らないのなら「競走馬を楽にするために行う治療。」ではどうだろう。
そもそも「馬」と表現しているが、何らかの目的のために人間が飼育して調教して使っている不自然な馬のことを、単に「馬」と表現し、その対極にある普通の馬のことを「野生の馬」と表現してしまうところに、動物に対する僕たちの偏見がある。犬も同じだ。普通の犬のことを「野良犬」と表現し、それは蔑称ともなっている。
あえて「保健」という当たり障りのない言葉にしたのはよく分かる。しかし、恩着せがましく「保健」という言葉を使ってしまうと、動物愛護の思想を持っているように見せかけて、実は人の身勝手さを覆い隠そうという感覚が丸見えになってしまう虞があるのだ。
もちろん「保健」には違いないのだから、「保健」という言葉を使うこと自体に間違いはない。しかし、この欺瞞、よほどの鈍感でない以上、気づかぬ青少年はいない。ここはひとつ、正確かつ穏やかな表現で「競走馬などに対する治療。」としてほしいとおもうのだが、どうだろう。
針で血を抜かねばならないほどに血が滞り、鬱血してしまう原因を作っているのはほかならぬ人間だ。競馬であれば、享楽的な欲望によってだ。焼鏝を当てなければ健康になれないという裏には、やはり酷使しているという現実がある。このように不自然な運動量を馬に課すのは動物虐待の疑いがある。
しかし、競馬の場合、動物虐待問題として大きく取り上げられないのは、単純な虐待とは大きく異なり、国民からの集金システムの一つとつとして、文字通り駒として「公的に働いている」その代償として考えられているだろう。その上、勝てばヒーローだからだ。実績を上げて有名になれば、栄誉賞の類すら与えられそうな勢いがあるのではないだろうか。もちろん商業ベースで進められる話となるのだが。それによって殺処分も免れるかもしれないということはあるかもしれない。
ちなみに、「馬つくらい」は恐らく「馬繕い」だろう。どうして「つくらう」という言い方になったのだろう。何にしても「馬本来の状態をつくり、健康を取り戻すこと」なのだろう。「保健」というと、「予防」という考えがあるはずだが、「馬つくらい」の意味合いは、やはり「不具合の治療」にほかならないのではないだろうか。
「予防」は、酷使しないことだから、勝たねばならない競走馬にとっては矛盾がある。そこに「保健」という言葉が使われていることに対する強い違和感があるのだ。
当然、その行為には馬の不具合を整えてあげるという世話係や獣医師たちの優しい心が宿っているように感じる。しかし、たとえ愛情に満ちた人々の行為であったとしても、こうした過酷な状況を作っているシステムに、彼ら自身も取り込まれているということに変わりはない。
これまで馬についてほとんど考えたこともなかったが、今回は人とのかかわりや歴史について強い興味がわいてきた。特に「人馬一体」とはよく聞くが、この実現は人側からだけの努力ではないように思う。そこに馬側の努力があったとすれば、それはどのようなもので、どのように成立するものなのだろうか。ここから学ぶものは多いように思う。
ちなみに、広辞苑には「人馬」の用例としての「人馬一体」はあるが、見出し語としての「人馬一体」は記載されていない。従って、麗しき「人馬一体」の意味は示されないのだ。軍馬、競馬、乗馬は人馬一体なくして成立しないと思うのだが。
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