学生の頃だ。朝っぱらからサウナ風呂で自称人殺しとおしゃべりしたことがある。逃走中だという。近寄って話しかけてくるので応じていたのだが、どこからどう見てもヤクザで背中や腕の「刺青」がやたらに威勢がよかったのを突然思い出した。
「刺青」といえば、「落書き防止の絵画」と共通点があるように思う。それは防御機能だ。
この防御タイプは意味による防御だ。意味が織りなす世界のバリアによって、「落書き防止の絵画」は落書きを防止する。これは「化粧」にも言えることだ。
「化粧」は顔を美しく見せたり、意思表示をしたりするだけでなく、バリアを張るという基本的な機能をもっていて、不可侵の度合いを増加させ、バリアとしている。手で触れれば化粧は崩れてしまうという大前提の上に美や意味を構築されているので、不可侵を期待したバリアが張られるのだ。
バリアは化粧の範囲の広さや色彩の強さにより、その強さを増す。構築されたものは保護しなくてはならないという本能に訴える方式だといってもよいだろう。
すっぴんメイクには親しみを感じやすく、きっちりメイクには侵しがたいものを感じやすいということがある。それも、こうしたことが原因の一つとなっているように思う。
「刺青」は「化粧」と異なり、不滅のものだ。だから、化粧よりもバリアの効果が格段に高い。「刺青」は消えないので、構築されたものは保護しなくてはならないという本能に訴える方式のバリアではない。逆に、「消せるものなら消してみろ。殺す以外に消す道はないぞ。」という脅しにも似た意思が「刺青」のもつ意味の強さとなり、バリアの強さに貢献しているように感じる。
その「刺青」示された意味が織り成す世界のバリアにはどのようなものがあるのだろうか。
植物や景色などを描いた芸術的な刺青は、落書き防止絵画的なバリアの張り方だと思う。しかし、文字を描いた刺青は、その文字の由来によってバリアの強さが異なる。これは、意味が織り成す世界をバリアとして用いているということになる。
例えば、「K」というアルファベットの刺青があったとする。これが現代的なポップ体か髭文字風のイタリック体かでも、その世界の印象が大きく異なる。その「K」が人の名の頭文字を想起させるものであれば、見た者の頭の中にその人物の住む世界の印象が構築されていく。その「K」が「刺青」をしている人物を支配している者や集団の名前の頭文字であれば、見る者にしてみれば、相手にする人数が多くなって厄介なことになることが予想される分だけ、なおいっそうバリアは強くなるだろう。イニシャルであるがゆえに不透明な思わせぶりの世界がバリアを強くしていくというタイプだ。
また、「刺青」がお経の一説であったり、難しい外国語である場合がある。これは一種の権威を匂わせるとともに、信念を表明しているかのような効果がある。これによって、先ほどの脅しにも似た効果ではなく、権威や信念などによる動かしがたい価値を明示するタイプのバリアだ。これには踏み絵効果も期待できる。
このようにしてバリアが必要な者は「刺青」をして、必要に応じてそれを相手に誇示して己を守り、「刺青」をする必要のない者はその場その場に応じて言葉や腕力の牙をむいたり、バリアを張って己を守る。前者は更新不可能なので追加して新しい局面に対応し、後者は更新可能なので経験を積んで実践力を磨くことになる。
これらのバリアを張れない者は、病んでいき、薬のお世話になるか、他人のバリアに潜り込むしかなくなるだろう。
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