突然思い出したこと157「見えない侵入者」

 何年も前のある日曜日の珍事を突然思い出した。
 警備保障会社というのは実に不思議な組織だ。警報が鳴ったので、侵入者有りと判断して電話をしたが、忙しいからといってなぜか待たされたのだ。驚くべきことに、最初に電話をしてから、警備員が到着するまでにかかった時間は、こともあろうに2時間45分。一体どんな警備保障なのだろう。どこの警備保障会社かといえば、テレビでも頻繁に宣伝もしている大手だ。
 待たされている間に2度も警備会社に電話をし、とにかく警報が鳴ったのだから早急に来てほしいと要請したのだが、返事は「今人がいないんです。忙しいので待ってください。」の一点張りだ。冗談ではない。警備保障会社にあるまじき勤務態勢だ。そもそも警備の意味を間違えている。まるで無人警備が基本になっているかのようだ。そうなのかもしれないが、そうではあるまい。
 もしそうなら、無人警備保障会社と謳うべきだ。クライアントのニーズが何なのかを確認してかみしめるべきだろう。最初の電話を含めて3度電話したのだが、2度目はクレーム、最後はもう面白半分にだ。
 警察に連絡しようかとも思ったが、警備保障会社の警報が鳴ったのだから、警備保障会社の警備員がまず駆けつけるのが筋というものだ。だから、意地でも来てもらおうと思い、警察への連絡は止めた。第一被害が確認できていないのに警察など呼べば何かと嫌みを言われるに決まっているからだ。
 そこで、侵入者と遭遇したら腕力にものを言わせるつもりで心づもりをし、単身捜索を試みた。休日の自主出勤は、事が起これば覚悟を決めて一人で対応せざるを得ないこともある。まあ、スリルがあって面白いと思うしかない。そうとでも思わなければ、面倒このうえない。
 死ぬほど待った後、警備員は到着した。制服姿に、か細い特殊警棒を装備していたが、体重は40キロほどだろう、身長はどう見ても150センチそこそこ。どんな体術を身につけているかは知らないが、それでも片手で十分に振り回せそうだ。特殊警棒も自前のもの方が重量も長さもあり、一撃で狼藉働く者の関節を破壊できるものだ。それが、そんな飾りのようなものでは役に立つまい。思わずこちらが得物を隠したほどだ。
 相手が素手の場合なら、凶暴であっても何とかたちうちできるかもしれないが、相手の武装がどれほどのものが標準だと想定してるのだろうか、今どき素手ではあるまい。刃物は違法でも長いドライバーは違法ではない。それを両手に持っていたら、一体どうするのだろう。結局戦わない、捕まえないという了見なのだろうと悟った。それにしても、人がいないので臨時のアルバイトでもよこしたのだろうか。それとも休日の日中の出動など最初から想定していなかったのだろうか。
 考えてみれば、警備保障会社の実績として、どれだけ侵入者を確保したかというような数字の実績は、宣伝もされなければ、話題にもならない。警備保障会社は警備を直接するのではなく、警備を機械の警備システムによって保障しているだけなのだ。逮捕などは一般人にも許されている行為なのだから、それは一般人に任せ、警備の保障をしようというスタンスなのだろう。
 侵入者があったとしても、捕まえることを目的としていないだろう。そもそも捕まえるなんて誰も言ってはいない。こちらが勝手にそう思い込んでいただけだったということだ。どうしてそう思い込んだかといえば、それは制服のせいだろう。疑似警察官だ。だが、捕まえるとは一言も言っていない。つまり、詐欺ではない。
 その警備たるや、無人警備で警報任せ。警報があってから、現場に到着するまでの時間がみそだ。
 侵入者を警備員が発見した場合は、恐らく物陰から侵入者の犯罪を確認してから警察に通報するのだろう。だから、速く到着しすぎてもいけないし、遅く到着してもいけないに違いない。様子を見ながら時間調整をしながら「警備行動」をとるのだろう。つまり、侵入者には基本的に面と向かって遭遇してはならないという不文律があるのではないだろうか。
 ともかく、自分は「侵入者有り」の電話を警備会社にした。そこがポイントだ。警報機が感知して、警備会社だけがその事実を知っていたのなら、警備保障会社にとっては何の問題もなかった。翌日の休み明けに、「事実」の「報告」をすればよいのだ。
 ところが、警報機が鳴ったので来てくれという電話を受けたため、通常とは異なる判断を迫られ、「人が足りないので」とか「忙しいので」とか、漫画のような理由で2時間45分もクライアントを待たせてしまったのではないだろうか。その間に臨時要員に連絡を取ったとしか思えない。このように思われること自体が、事実がどうであれ問題なのだ。
 逆に、もし、本当に人手不足で、そして忙しくて現場に来ることができなかったとしたら、それはそれで大変由々しき問題を抱えている不良警備保障会社だということになる。ああ、もう馬鹿らしい。
 結局侵入者は発見できなかったが、音に感知する警報機が作動したということだけが明らかとなった。しかし、誰もいなければ音など出ない場所だ。
 とにかく警備員が来るまでの名実ともに長い時間、見えない相手がどこに潜んでいるかを捜索したり、侵入者が見つからないうえに警備員も来ないので、仕方なくしなくてもよい仕事をしたりして過ごした。警備保障会社のコマーシャルを聞くたびにこのときのことを思い出す。

広告

どこにいるの? について

「がんばったら疲れる。疲れたら休む。休んだらがんばる。」ということにしておこう。
カテゴリー: 突然思い出したこと パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中