怪しい広辞苑255「第七版の出版予定が近いので」

 読み込めば読み込むほどに驚かされる「広辞苑」だが、年回りからすればそろそろ第七版が出版されてよい時期になってきた。内容にはやはり不安がある。立派な専門家が監修しているので、その後の編集で変わるのだろうか。一つ一つの部分も大事だが、辞典である以上は、全体のための部分だ。全体の構成や調整は編集の大問題だ。
 各専門家は専門家であるが故にその専門分野に関わる一語一語、辞典の部分について責任を持つ。辞典であるのだから特別真剣に監修してくださる。だから、下働きの人々が提示した改善箇所に目を通し、それを手直しするだけというような、安直な手法をとるというような手抜きはプライドにかけてないはずだ。名前が載る以上、これはおかしくはないでしょうかと周囲の人は言えないようではいけないと思うはずだからだ。だが、利用するのは専門家ではない。辞書の命は、一般人がどのように理解できるかにある。それには、専門家以外の感覚が必要だ。その担当は編集者にある。
 だが、如何にチェックが緩いのかということは、これまでにも一部示してきた。第七版が出版されたときには、それらの何がどのようになっているのかを見たい。かの有名な「広辞苑」の記述だという、それだけの理由で利用者の思考が停止して、その内容を鵜呑みにしてしまうという傾向はまだ強い。辞典に限らず、よりよいものを目指して信頼されてきたが故の、大きな落とし穴に囲まれているという危機感を、どれだけ持つことができるかということが、つくる側が持ち続けなくてはならない共通の課題だ。
 辞典であれば、何を載せ、何を載せないかということについての議論がどれほどあったのかという疑念を持つ人々が多くなればなるほどよい。「これを載せるなら、なぜあれを載せないのだろうか。」という不満が募るばかりの仕上がりでは、もう本当に困るのだ。お金を払って購入するのだから。待てよ。不満があるあるならば、買わなければよいのだ。だが、「広辞苑」は手頃な辞典として家庭に一冊は備えておいてほしい。「広辞苑」で終了してもよいが、「広辞苑」から始まるという、知的生活を送るための基本的な道具の一つとして存在していてほしいのだ。もっとも、「広辞苑」がその座につかないのなら、別の辞典でもよい。しかし、ネームバリューと歴史から考えて、それは今のところ「広辞苑」であるのが望ましいと思うのだ。
 小さな辞典であったら、このようなことは要求しない。「広辞苑」の規模の辞典だからこそ、要求されることだ。小学館の「日本国語大辞典」のような大規模な辞典ならば、説明文字数やイラストスペースの制限は緩くできるだろうから、誤解が生じないように、また不都合が生じないように、存分に表現すればばよい。しかし、卓上の一巻という縛りを貫いてもよいが、「「日本国語大辞典」がその規模を縮小して「精選版」として3巻を出版しているように、「広辞苑」は逆に3巻程度に巻数を増やしてはどうだろうか。
 さて、「利用者は一語だけ調べて終わる」という前提で編集された辞典は使いにくい。百科事典的な要素も盛り込むときに、専門という縦の筋を並べていくだけでよかった時代もあったかもしれないが、もう今は違うだろう。インターネットの利用が根付くことによって知的欲求はより高くなり、利用者も一語調べた後に、説明内で使用された語や、関連する語や、連想した語についても、さらに調べる傾向がより強くなって、それが普通となっているように思う。
 少なくとも、対立する内容の語が載っており、それが同じ形式で説明されていること、また類似する内容の語には、その差異が明確にされた説明となっていることが必要だ。これは小さな辞書には到底望めない。「広辞苑」だからこそ要求されることなのだ。新しい言葉を載せるのも悪くないが、そうしたものは別のメディアに任せるか、「別冊新語広辞苑」のようなものを企画するなどして対応するという手もある。
 仮に、「広辞苑」だけで調べるのではなく、同時に他のメディアでも調べるのがもう一般的だから、「広辞苑」は「広辞苑」としての独自性を持って、その役割を果たせばよいという編集方針があるのだとすれば、それはそれで仕方ない。第七版の売れ行き状況、利用者の声などをヒントに次の第八版を企画していけばよいだけだ。
 確かに「さまざまな条件から必然的に生じる編集上の多くの矛盾」を、どのように丸めて無毒で不都合なきものとしていくかという編集は、高度で難しく、年月を必要とする作業だ。これからの「広辞苑」のあり方は、中規模辞典の「広辞苑」というスタイルを継続させたい以上、別冊の解説本や月刊広辞苑ニュースなどのような、周辺の出版物の企画と抱き合わせるというスタイルをとるしかないのではないかとも思う。もちろん、その購読者の確保がどれだけできるかはわからない。僕は単なる利用者なので、経営のことなど気にかける義務はないのだ。
 しかし、第七版出版後に、これまでの版と比較しながら、不都合のある説明、間違った説明等を指摘したり改善したりしていき、我が愛する「広辞苑」がよりよいものとなるようにこっそりと応援はしていきたいと思う。

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