変な疑問177「西方浄土ってどこなの?」⑧

 まず、「宇宙との一体化」の三種類のスタイルにはどのような種類が考えられるだろうか。
 一つ目は、人も結局は宇宙の構成物質だという意識、つまり元に戻る方向での一体化だ。意識の上で、「人間が宇宙化」することで、元々自分が宇宙であったことを再認識するのだ。すると、とてつもない存在である宇宙を背景に持つ自分をイメージしたり、宇宙と同根の無限の一部であるというイメージ、そして流転してやまないエネルギッシュなイメージなどを、自分自身に見いだしたりすることなどが、容易にできるようになる。そこからは、このような存在である自分を自覚することを通して煩悩を捨てる、という流れが生まれそうではないか。
 宇宙の中に必然的に生じた自分、宇宙の中で極めて短期間で、しかも微力であるにもかかわらず、何らかの役割を果たしているであろう自分、つまり、宇宙の一状態としての自分を思い描くことになるのだ。そうした感覚をもとにして生活した場合、煩悩を解消するどころか、煩悩が生じることすら難しいかもしれない。
 宇宙規模から考えたら、つまり無限大に小さな存在で、しかも瞬間的にしか生存していない、しかもたった一人の人間の、そして幻想に過ぎない煩悩など、存在しても存在しないに等しいのだ。 
 これを極めて広げると、色即是空という発想に辿り着くのだろう。人類もいずれかは別の生き物に変化するか、生き物以外の存在になってしまうだろう。もちろん、それを待たずに完全に消滅してしまう可能性も大きいのかもしれない。そして、後々には、また似たようなものとして再び出現するようなこともあるかもしれない。結局、人間も存在である以上、宇宙の一状態に過ぎないのは一目瞭然だ。
 だから、そこを中心として意識すれば、煩悩などを感じることもないという理屈だ。仮に煩悩として意識するときがあったとしても、それは幻想に過ぎず、どうということもないものだという感覚をすぐに持つことができる。そうした心の癖を若いうちからつけておけば、実に便宜的ではあるけれど、煩悩に振り回されないという意味では、生きていくのが容易になっていくことは間違いないだろう。これは救われているという状態だ。
 これは、とてつもなく大きなものに接し、それを自分と比べる形で意識することで、自分の悩みなどなきに等しい小さなものではないかという思いを持つという救われ方だ。大海を見晴らして、潮騒に耳を澄ます。大空を仰いで、雄大な雲の流れを眺める。そうしているうちに悩みが消えていくというやり方と同じだ。
 大地の果てを見据え、全力で駆けて風と一体となるというのも同じだろう。自分の足で駆ければ、ランナーズハイによって爽快感を得られるというおまけもつく。自分の足で駆けなくても、馬なり、自動車なり、目の前の景色が次々と展開していくのを目の当たりにする。それと同時に、展開していく景色の中心になればなるほど動かない存在である一点、すなわち展開する景色の中心の一点に、無限の彼方を意識することになる。
 さらに、その一点から周囲に展開していく景色の流れが、とてつもなく大きな大地の存在を証明することになる。視界の中で静止したように見える大海の圧倒的な存在感や、ゆったりとした空の雲の流れを見せる大空の雄大な存在感とは性質を異にする、大地の多様な存在感は、確かにまた格別のものがある。
 これらは、自分の感覚を変えるというだけでなく、煩悩の直接の原因となる対象から、一旦、意識をそらすという効果もある。そうすれば、煩悩を継続的に意識しすぎ、さらに深みにはまっていくという悪循環に一旦きりをつけられる。そして、現実に意識を戻したときには、新しい感覚で現状を把握するから、世界が変わって見えるのだ。煩悩の対象となる相手も宇宙の一状態。自分も宇宙の一状態。そして、その状態は流転する。相手も自分も同じ宇宙の一状態。相手は自分で、自分は相手。そうした感覚になったとき、慈しみの心しか生まれそうにない。そのように思いなすことが容易になることは確かだ。
 遠いところにある大きな存在であるところの「西方浄土」を意識させるというのは、これらの効果を期待したやり方の発展形だと考えてもよいのではないだろうか。  
 それをたとえ観察はできないにしても、大海や大空や大地を、想像の中で大宇宙にまで広げ、絶対的な煩悩撲滅を図るという目論見がそこにはあるように思う。問題は、おあつらえ向きの「西方浄土」的な自然現象やら何やらが、たとえ想像上の宇宙であっても、あるかどうかということだ。
 では、「宇宙との一体化」の二つ目のスタイルはどうか。

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どこにいるの? について

「がんばったら疲れる。疲れたら休む。休んだらがんばる。」ということにしておこう。
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