変な疑問213「五輪の塔の不思議」⑫

 次に、「遺体」に対して「物と同じ思い」を抱くのはどうしてかを考えてみよう。
 それはどのようなときに抱く思いなのだろうか。人として見做せないとき、人として見做さないほうがよいとき、このどちらかだろう。それは如何なるときか。
 「遺体」を処理するときの思いだ。たとえば、無様に死後硬直していた四肢のなりを直すときの思いだ。変な姿勢で硬直している肉体へ無理に力を加えて真っ直ぐにする処理をするのは、亡くなった人への思いやりでもあるが、葬儀の時に苦悶の表情や虚空をつかむ手が、亡くなったときのままに突き出ていたりすれば、安らかに眠らせないということなのか、一体どういうつもりかと世間が許さないことに対する、事前措置でもある。勿論、棺桶に納めにくいことがあっては困るという、物理的な問題の回避も事情としてはある。
 このとき無理に力を入れて四肢を真っ直ぐにするのは、やはり「物」と思う必要があるだろう。「生体」にはかわいそうで加えられない力を、「遺体」になってからも敢えて加えざるを得ないからだ。
 もっとも、その処理には「遺体」として、いや「生体」として扱うという雰囲気も必要だ。その理由は、大方は遺族の前でその処理をすることが多いということもあるが、「物」と思って無理に力を加えることに対する後ろめたさもあるだろう。
 また、遺族でない人による行為としてならば、見ず知らずの人の体に思いやりをもって触れるという、本来は不自然な行為が不自然に見えないようにしたいというプライドもあるからだろう。
 また、全く別の場合もある。それは、あまりにも崩れた「遺体」を扱うときだ。「生焼けの遺体」「黒焦げの遺体」「寸断されて原形をとどめない遺体」「拷問の限りを尽くされたと思われる遺体」「水死体となって原形をとどめない遺体」「腐乱死体となった遺体」「肉体の一部しかない遺体」「その他の見るに堪えない遺体」が無数に出現してくるのが実際だ。
 いちいち感情移入できない職種の人もいるだろう。通常の神経の持ち主なら、見るたびに、そして触れるたびに精神的ダメージをくらうことになるだろう。恐らく若手の警察官などは真っ先に手にすることが多いことはずだ。
 その場合、もう「物」として見るしか自分の精神を救う方法はないではないか。もっとも、「物」として見ることが容易なのは、欠損部分ばかりでほんの一部しかない場合だろう。小さければ小さい程よい。体のどの部分か分からねば分からない程よい。
 恐らく形の無いもののほうがよい。最も形のな「遺体」は、たとえば猟奇殺人で、肉体の原形は既になくなった状態、つまり「ミキサーにかけたような遺体」か、逆に「血液だけにされてしまった遺体」だろう。もうそれは液体なので、容器の形になるしかない。それは幾何学的な形の容器に違いないから、幾何学的な形の遺体となる。臭いはあるが、見た目がせめてもの救いだ。
 「血液だけにされてしまった遺体」に敢えて人の形の容器を用意して注ぎ込むことはないだろう。それは悪趣味というものだ。
 ステーキなど、サイコロ状のものからは本体は想像しにくいだろう。しかし、豚足は形がほぼ残っているから、極めて本体を想像しやすい。昆虫食が苦手なのは、体が小さいために、全身の姿が明確だからだろう。
 「五輪の塔」はどれもこれも似たり寄ったりだ。最近流行りのデザイン墓とは違う。この似たり寄ったりというのは、一つの救いなのではないか。
 大きな人も、小さな人も、死ねば同じ「五輪の塔」で弔われる。立派な人も、こそ泥も、死ねば同じ「五輪の塔」で弔われる。金持ちも、貧乏人も、貴人も卑しき人も、死ねば同じ「五輪の塔」で弔われる。
 その「五輪の塔」は、単なる墓標ではない。墓標なら四角の石や特徴のある自然石を置けばよい。「五輪の塔」には万物流転の思想が根底に流れていそうだ。死んで仏になるのかもしれないが、その仏の意味がよくわからない。
 ともかく世界を作っている五つの要素に戻るという考え方の象徴にしか見えない。一つの科学的なものの見方だ。そこにはそうしたことを根拠とする平等観も感じられる。

どこにいるの? について

「がんばったら疲れる。疲れたら休む。休んだらがんばる。」ということにしておこう。
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